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赤い糸が、玄関に落ちているのをみつけたのは、二ヶ月程前。指先でつまみ上げて、あゝこれはそうか、友人が穿いていた赤色ズボンがほころびて、と微笑み笑ったのだった。白熊の下半身デザインのマグネットで、冷蔵庫のドアに貼りつけた。

赤い糸を、渡されたのはゆうべ。
「手首につけて下さい。」受付に腰掛けた女にそう告げられたけれど、わたしは左手小指に巻きつけた。パーティ会場には、いろんな空気が入り交じっていたけれど、その場にいる人たちのほとんどは、よく似ている匂いがするとおもった。異質だったのは、たぶん5歳くらいの少年一人と、パーティの終わる頃に階段上の踊り場にぼうっと佇んでいた男性一人、くらいに思えた。今思えば、その二人くらいしか、しぜんな生き物に見えなかったのかもしれない。こんなことを綴っているわたしは、自身をひどく可笑しいように感じる。

中納良恵さんの声は、ふっくらしていて、どっしりと重みがある、かとおもえば、カラフルで、澄んでいる。天井の窪みに、彼女の声が反響しているのが、目に見えるようで、驚いた。TABACCO、を、うたう彼女に、心臓をがっしり、掴まれた。

十年以上前からの知人に、初めて会った。お互いがお互いを認識しているのに、これまで会うことが無かったのはふしぎだ。彼女は、ゆったりとした口調で話し、凛、としていてうつくしいひとだった。インドからやってきた石鹸とハーブティ、きらついた記憶と、耳の残響を、お土産に。



うっすらと降る雨は、きもちがいい。お天気雨が狐の嫁入りなら、明るい薄曇り雨は?お猿の嫁入りかしらん。納得できるよなできないよな。みたいな会話が、すきだな、やっぱり。すきなんです、まじめにふざけてるのが。

屋上でふかす煙草は、おいしい。
特に、こんな季節には。


はやく来週にならないかな、なーんて、せっかちで心配性なわたしは、身勝手なことばっかりおもってる。ただ、どうか、無事で。


呼吸をするみたいに、祈る。