もんてかるろ
時間が無い、だけどひま、
まったくそのとおりだ。
けっこう、いろんなことに参ってしまっている、さいきん。
まいにち、眠りにおちては夢をみる。数日前、受話器越しに耳にした声は、よくしっている、なつかしい声だった。待ち合わせは、すれちがって、すれちがって、あえないまま、目がさめた。二日後には、ソファの隣に腰かけていて、きみはかなしそうな顔をしてた。だけど、鋭くてやさしい、眼の色で、
きみは、だれ?
もう、そんなことすら、問題ではないというのに、わたしは質問する。
明晰夢だったなら、きっと、黙りこんでしまっていたのかも。
トランプを手に入れた。
ひとりでいるときに、どんな遊びをするかって、それは、だれにもいわない。わたしの呼吸がもし、1秒後に停まったとしたなら、すべてはあのこに聞けばわかる。
さ、帯締め直して、いきましょか。
そう、時間が無いのだよ。
だけど、背中の後ろに降る雪は、いつでもあたたかい。
4U
ふときづいた。
ある女の子と話していたとき。
わたしたちがことばを交わすとき、ことばを " 視て " いるのかもしれないな、と。
赤色の彼女と、青色のわたし。
何もかもがまるで正反対なわたしたちは、背中合わせでくっついているみたいだ。太陽が顔をだして、月が隠れていくように、星たちが鳥に姿をかえていくように、
何年か越しで気づいた、
二人とも、それぞれの額に傷跡があることを。原因は違う、よく似ている傷。
ーーーーーーーーーーーーー
そう、ことばを視ているから、気づくことが、たくさんあるのかもしれない。やまないおしゃべりが呼んだ朝に、みた夢は奇妙だった。
凛々しい犬が鼻先でおしえてくれた道の先には、何があったのだろう。
朝から、チキンスウプをつくった。
キッチンからのいい匂い。
また、つぎの夜にね。
おやすみ、スウプ
ドローの確率
コイントスをコントロールできるのは神だけ、そういっていたのは一体だれだったか。もはやそれ自体は問題では無い。
数日前にふと、感じた、
手札が増えていく。
何枚なのかは、わからないけど。
ひさしぶりに、お気に入りの灰皿をテーブルに置いて、煙草に火をつけた。映画を観ながら、片手でグラスのふちを指先でなぞってあそんでいた。ひとくち舐めるたびに、音が変化していく。ひとくち、またひとくち、空っぽになって、また注いで、
くるくるおなじばしょを回っていても、時間の問題で目をまわしてバタン。だから、じぶんに追いつかれないように、じぶんを追い越して、いかなくちゃっておもう。いつのまにか鼻がよくきくようになっちゃってて、だけど犬とかオオカミよりはちゃんときかないやつで、混乱して殻にこもる。だれも割ってはくれないよ?ってきづいて、内側からコツコツ、コツコツ、ひびをいれてまた外に出る。すごくまぶしかったりする。ああ前よりこわい世界になっちゃったなあ、でもやるぞ、って、
そういうのぜんぶ、だいじにしていたい。楽な場所ばかりには居られないのだ。
シュークリームをひとつ、食べた。
あんまり、甘くなかった。
1匹の魚が、泳ぎながら囁く、
「 水族館ではお静かに。」
都会の冬
ふと目をさまして窓の外をみると、雪がつもっていた。まだ、ほの暗い中でも、白はくっきりとまぶしい。
ゆうべは、しん、としていて、あまり寒さを感じなかったようにおもう。ああ雪がふるなあと、ぼんやりかんじていた。
そのドアをひらくと、しっているにおいがした。わたしはここに訪れたくてたどり着いたのだとわかった。
いつものようにビールを頼むと、店主は瓶をあけてグラスに注いでくれる。泡のつぶと、あたたかい室内の空気は、おなじものではないのだろうか。
はじまりのピアノの音で、ああ、いつもの、そうおもった。いつのまにか、わたしのなかに、しっかりしみこんでいた一夜の音たち。
なんども耳にしているのに、どうしてか、ゆうべはことばのつぶが頭の中を駆け巡った。
「今日が命日なんだよ」店主がぽつり、ぽつり、話してくれた。記憶の温度が、つたってきて、こめかみがじんとしてきて、
故に、ウイスキーを呑みすぎたのよ。ちょっと長い関係のブルース、だなんて。
悪夢ばかりみるねこの寝息と、雪を溶かす雨の音、換気扇の回りつづける音と、亀がぱしゃぱしゃばたつく音と、わたしのお腹の虫の声、
静かであたたかい、賑やかな朝。
わたしはわたしを、みつけつづける。
ゆめくい
朝、ねむたくならなくて、ひさしぶりにインターネットをサーフィンした。波は、まばら。いろんな情報がひしひし、していて、凝り固まったり、ぐんぐん、流れていったり。つぶつぶが、うごいて、いつかみた、宇宙から眺めた地球みたいだとおもった。はなれて、ちかづいて、そうすれば、いろんなふうにみえる。
万華鏡も、そうだったな。角度を変えて、まわして、まわして、びっくりして、まわして、きれいだった。
なんでもよくにている。
きのうは、ずいぶん、ぼんやりしていたみたいで、仕事にいくのに、サンダルみたいな靴を履いていって。帰り道、すごくさむくて、かかとが取れるかとおもったけど、生きてるな、よしよし、なーんて頷いてしまうくらいのわたしだから、ここまで生きてこれたのかもしれない。もしも、かかとがほんとうに取れてしまったら?子鹿みたいな歩き方に?それとも、ゆらゆら、天秤のように?なーんていうことばかり、想像する。で、どうするの?
粘土、買いにいこうか。ぺたぺた。
まだまだ、さむくなる冬。雪は、ふるだろうか。
1秒後に死んじゃうかもしれないんだし、それより先の未来を悲観するのはやめようとおもう。
たいせつなものなら、すこしだけ、それでわたしにはじゅうぶん。
不良少年のめだまは、なきたくなるくらい、きれいなんだよ。
覗いてみたい、万華鏡。
告げ口心臓
きのうの朝、東京に雪がふった。
友人からの知らせを目にして、外にとびだすと、頬がゆるんだ。ぱしぱし、顔におちてくる水っぽい白いつぶ。浮き足立っているのが、はずかしいくらいにわかって、首がすくんで、亀みたいねとまたわらって。
きのうの夕方、傘をもらった。
誕生日おめでとう、なんていう理由で、首をかしげたけれど、それをひらくと、瞳孔までひらいて。雨でも晴れているような、こまっちゃってわらっちゃうような、すてきな贈り物で。だけどゴッホも眉間にしわをよせて苦笑いするだろうな。
贈り物をうけとって、そのうらがわに、相手の感情をみつけたりすると、鼻の奥がぎゅ、っとする。
それに、傘と手袋と葡萄酒の共通点をみつけて、うれしいのであーる。
これは、なぞなぞです。
届かなかった手紙とか、忘れられちゃった約束とか、どうして?とか、かなしいとかむなしいとか、あるけど、まずはやることやらなくちゃ、とおもって。
360°、ぐるっと見回して、
また、食指がコントロールできなくなってきてる。おなかがへっているのに、食べたいものがわからなくて、今朝から何も口にしていない。
電波がぴしぴし、散っていく。
だけどわるくはないキブン。
これから、どこへいこう。
チョコレートをポケットに、
くるった時計を腕に、
白を汚すのはいつだって人間。
かいだん
のぼってるのか、おりているのか、どちらかはわからないけど、秒針がすすむみたいに、すべてが変化しつづけている。わたしの時計はちょっとくるっているみたいだけど、それもいいか、なんておもう。だいじなものは、こわれたってだいじなものにかわりない。そんな玩具とか、ギターとか、ライターとか、あって。
1、2、3、の次は、6、かもしれないし、32、かもしれなくて、あ、い、う、の続きは、み、かも、それか、ぴー、とか、しゃー、かもなっておもって、あたまがシューシューいいはじめて、けむりぱっぱのボカン。
こういう性格はめんどうくさい、けどたのしい気もするからおっけい。
つかれるんだよ、そう、つかれちゃって、脳幹もっと細くなりませんかね?海馬さんてば働きすぎだから温泉旅行でもいってくれば?シナプスぷちぷち潰していいの何個まで?とか話しかけてるうちに、もひとつボカン。おバカさん。
ああわたしはずっとねむっていたのかも、って、とつぜんおもった。
人間がパズルだとしたら、だいじな1ピースだけが行方不明で、どうしても身体が動かないどうしたらいい、みたいなかんじだったけど、こういうの、だれにもわからなくていいとおもってる。そのことにずいぶん時間が経ってきづいて、その1ピースは目にみえるんだけど、どうしても指先は届かなくて、まだ夢の中、まどろんでるかんじ。わるくない。
時計、やっぱりくるってるね。
つぎの夜がきたら、どこへいこう。
時空の歪んだあの街で、流れ者にでもなろうか、なんて。ねこたちがあそんでいるかもしれないし。
かなしみは絶え間無い。
そんなこと、17歳のときからしってたよ。だから、だいじょぶ。
まぶたに小人がぶら下がってる。
いたずら禁止。